◆(園山えり議員) 日本共産党市議団を代表して、ただいま上程されました二十議案のうち、第六一号議案 公の施設の指定管理者の指定に関する件、第六八号議案 平成三十年度鹿児島市一般会計補正予算(第三号)中、款土木費、項市営住宅指定管理業務の債務負担行為二十五億七千五百二十万五千円の二議案について反対する立場から討論を行います。
 同議案は、本市の辻ケ丘住宅など七十五施設の住宅等の指定管理者を指定するに当たり、五つの応募団体の中から指定管理者選定委員会の審査を経て選定された公益財団法人鹿児島県住宅・建築総合センターを指定管理者として指定する議案と平成三十一年四月一日から平成三十六年三月三十一日まで五年間の指定期間の市営住宅指定管理業務費二十五億七千五百二十万五千円の予算を債務負担行為として議決する議案ですが、一括して反対する理由を申し上げます。
 一点目、六月の第二回定例会で市営住宅条例を改正し、法人その他の団体の中から指定管理者を指定し、市営住宅の管理を委ねることが決定されていますが、そもそも市営住宅条例を改正して市直営を廃止し指定管理者制度を導入することを入居者が要望していないことは、条例改正の際の質疑でも明らかにされています。だからこそ、指定管理者制度について積極的な周知に努める必要があると考えますが、五カ月以上が経過しているにもかかわらず、当局は七月に住まいのひろばによる広報を行った程度であります。住宅ごとの説明会や入居者の要望等をくみ上げるなどの積極的な取り組みは行われておらず、これでは入居者への周知や理解が十分に図られているとは言えません。また、現在、各支所で行われている市営住宅の受付業務について指定管理者がどのようにかかわるのかという点については、本市と指定管理者の今後の協議上の課題として残されており、来年四月から指定管理者による市営住宅の管理が円滑に実施されるのか懸念されます。
 二点目、指定管理者制度の導入は、市民サービスの向上を目的にし、その具体的な内容として、夜間・休日受け付け窓口の設置や高齢者等の安否確認が指定管理者から提案されていることが評価されています。委員会審査では、市営住宅を市直営で管理する中核市の中で高齢者等の安否確認などの支援サービスを独自に行う中核市について把握していないとの答弁が示されていますが、指定管理者が提案する高齢者等の安否確認の取り組みは本市の市営住宅で既に取り組まれているシルバーハウジングの取り組みと類似しており、これらのサービスを拡充することは可能です。また、夜間、休日の緊急時の対応についても、現行では月に一、二回の頻度で入居者からの問い合わせに対応できていることから、指定管理者ではなく、市直営の場合でも体制を強化することによって市民サービスの向上を図ることは可能であると考えます。
 三点目、指定管理者を導入することにより入居者からの苦情相談や要望などの受け付け及び家賃収納や滞納整理の受け付けなどの初期対応は指定管理者が行うことになります。本市の資料では、二十九年度末時点の家賃滞納戸数は六百三十三戸、入居総数の六・五%ですが、指定管理者が本市に提出した事業計画書では、家賃督促専門員を配置して滞納整理に取り組み、五年間で現年度の収納率一〇〇%を目指すとあり、家賃滞納の常習化を防ぐため初期対応の徹底を図るとされています。指定管理者制度の目的である効果的・効率的な管理運営のために家賃滞納対策が一層強化され、入居者への督促や催告の機械的な送付事務が増加することが懸念されます。また、滞納発生の要因には病気や失業等による収入の減少や生活保護の打ち切り、そして、子供の進学等による出費の増加等の要因があることから、これらの課題に指定管理者で対応することは困難であり、福祉分野の担当局との連携が後退する懸念があります。
 四点目、入居者の募集や決定は公営住宅法により事業主体である地方公共団体が行うこととされ、指定管理者が行うことができる業務は行政判断が不要な機械的事務、事実行為であり、入居申請の受け付け、入居決定等の通知行為であるとされています。ところが、仮当選者への通知行為の前提となる入居条件の審査基準に関して極めて不明確な問題点が残されています。それは、本会議で我が会派の議員が住宅使用料の未収債権と入居申し込みに関して質問した際、時効の援用や市の債権放棄によって消滅の時効が完成した市民が市営住宅に入居を申請した場合、入居できるのかという質問について、当局は、特に取り扱いは定めておらず、根拠となる法令もないので、今後、他都市の状況を踏まえて検討すると述べ、明確な答弁を示しませんでした。これは、入居条件の審査基準の根幹に係る重大な問題であり、看過できません。また、未収債権が残る入居申込者に仮当選の通知を出したという行為について、一片の瑕疵もなかったのかという問いに対して、未収債権のある者の入居決定の取り消しの手続を適正に行うと答えるのみで反省の態度を全く示されませんでした。今回の本会議での質疑で明らかになった問題点は、入居の申請から決定に至るプロセスの中で入居条件の根幹に係る問題を不明確にしたまま指定管理者に業務を委ねることになり、同様の問題が再び引き起こされることが懸念されます。
 以上、四つの反対する理由を申し上げ、討論を終わります。(拍手)