令和2年第3回定例会(9月議会)は9月28日に終了しました。
傍聴、視聴して下さった皆様、ありがとうございました。
最終本会議で大園議員が討論を行いました。
討論内容は以下の通りです。
日本共産党市議団を代表して、
請願第1号 加齢性難聴者の補聴器導入に対する助成制度の創設等について
請願第2号 国の責任による「20人学級」を展望した少人数学級の前進を求める意見書提出の件について
の二件の請願について賛成の立場から討論を行います。
まず、請願第1号 加齢性難聴者の補聴器導入に対する助成制度の創設等について申し上げます。同請願は、国に対する「加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的補助及び医療保険適用を求める意見書」の採択と、本市独自の「加齢性難聴者の補聴器購入に対する助成制度の創設」を求めるものです。
第一の理由として、委員会審査における不採択の理由として「国立長寿医療研究センターにおける補聴器による認知機能低下予防の効果を検証するための研究については、2024年までかかるとのことであり、明確な科学的根拠いわゆるエビデンスが確認されない現状では、公的助成、医療保険の適用を求める意見書提出については、時期尚早と言わざるを得ない」との意見が表明されましたが、私どもの独自の調査では必ずしも研究が「2024年までかかる」のではなく、2022年度までに研究が終了し、2023年度に研究結果がまとまるとの情報を確認しています。
一方国際的には、難聴と認知症との関係性について、2017年7月、国際アルツハイマー病会議において、「認知症の症例の約35%は、潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因する」と発表し、その際「予防できる要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」と指摘されています。つまり国際的には、難聴と認知症との関係性について、エビデンスは確立されており、この事実は、難聴に対処することで認知症が積極的に予防できることを意味しています。
いま国に対して「加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的補助等」を要請することが、決して「時期尚早」ではなく、国際的な科学的根拠をふまえた時宜にかなった要請であると考えます。
第二の理由として、委員会審査では、全国市長会が「加齢性難聴者の補聴器購入に対する補助制度の創設」を提言したことをふまえ、今後「国等の動向を注視したい」との不採択の意見が表明されました。
九州市長会を含む4支部から議案が提出された結果、国への提言が行われたと伺っておりますが、このような提言が行われたということは、地方自治体としても、難聴と認知症の関係性について理解を深め、先ほどのエビデンスの有無にかかわらず、補聴器購入に対する国の補助制度の創設の必要性について、市長会として認識が一致したことになります。市長会に、このような積極的な動きがあるならば、私ども議会も、全国市長会と歩調を合わせ、同請願の趣旨に即して、国に意見書を上げるべきと考えます。
第三の理由として、同請願に対して健康福祉局当局は「難聴者数の傾向について把握していない」「加齢による身体的機能の低下と補聴器購入助成制度創設のための財源の確保について、両面から研究したい」「他都市の調査を継続しながら、今後検討をすすめていきたい」と見解を表明しています。
本会議での私どもの会派の個人質疑でも明らかになりましたが、本市の「要支援・要介護認定者数」3万3390人は、すでに認定調査の中で「聴力」、具体的には、「普通」、「普通の声でやっと聞き取れる」、「かなり大きな声なら何とか聞き取れる」、「ほとんど聞こえない」、「聞こえているのか判断不能」の5段階に分けて調査員が判定しています。
また同時に、認知症の程度についても、「家庭外で、日常生活に支障をきたすような症状や意思疎通の困難さが見られる」Ⅱa以上の場合、認知症の判定が行われており、これらの判定結果は、本市は既にデータとして保有しています。にもかかわらず、聴力と認知症との関係性について調査を求めたところ、「国の動向を注視する」との答弁が示され、本市自らが「研究する」という立場を表明されませんでした。
従って、同請願を採択していただくことによって、市当局が前向きに調査研究に取り組むことを推進し、市独自の「加齢性難聴者の補聴器購入に対する助成制度の創設」にむけた検討を加速させることになると考えます。
以上3つの賛成の理由を申し上げ、同僚議員の皆様のご賛同をお願い致します。
次に、請願第2号 国の責任による「20人学級」を展望した少人数学級の前進を求める意見書提出の件について申し上げます。
本件は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言後に取りまとめられた「学校の新しい生活様式」にもとづいて身体的距離を保つために40人学級を20人学級に編成した緊急的な取り組みを経て、あらためて少人数学級が子どもたちの豊かな学びを支えるとともに感染症対策としても効果があることが全国的に認識されたことから、国の責任で前進を求める意見書を鹿児島市議会から提出することを要請するものです。
第一の理由として、請願では「子どもたちの命と健康を守り、成長と発達を保障するため、緊急に20人程度で授業ができるようにすること。そのために教職員の増員と教室の確保を国の責任で行うこと」となっていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が本市でも予断を許さない状況の中、今後は文科省の「学校の新しい生活様式」の行動基準を踏まえた対応が必要です。行動基準にある身体的距離を「できるだけ2m、最低1m」とした場合、現在の教室面積の平均64㎡の40人学級では最大20人編成でなければ距離を保つことはできませんが、請願者の意見陳述でも触れられたようですが、過大規模校ともなれば40人を超える学級編成もあり、余裕教室もない状況の中で、行動基準を担保する教職員の増員と教室の確保は本市にとっても喫緊の課題であると考えます。
第二の理由として、第一の理由で述べた小学校の現状は全国的なものであり、地方からの要請で国も大きく動いているからです。
今年7月3日に全国知事会、全国市長会、全国町村会が連名で「現在の40人学級では、新型コロナウイルスの感染予防ができない」として少人数学級の実現を求める緊急提言を萩生田光一文部科学相に手渡しました。
その後、中央教育審議会特別部会の中間まとめ(骨子案)でも「身体的距離の確保に向けて教室等の実態に応じて少人数編成を可能とするなど新時代の教室環境に応じた指導体制や必要な施設・設備の整備を図る」と明記され、さらに政府の教育再生実行会議でも来年度の予算編成において関係省庁に対して少人数学級の検討を促すことで合意、安倍内閣の退陣後も議論を続け、早ければ年内に具体的な制度設計をまとめる方向で一致しました。
先日の報道では、文部科学省が1学級当たりの児童生徒数の上限を今後10年かけて30人に引き下げた場合、追加的な財政負担がほとんど必要ないとする試算を明らかにした一方で、どういった内容や規模で実現できるのか政府内での折衝が続いているとのことです。
まさにコロナ禍を経た地方の切実な声が国を動かしている時だからこそ、地方自治の車の両輪である、本市議会が国に意見書を提出し、この動きを後押しする必要があると考えます。
第三の理由として、本市議会では先の第二回定例会においても教育予算の拡充を求める国への意見書を全会一致で可決し、「子どもたちの教育環境改善のために、計画的な教職員定数の改善を推進すること。とりわけ、小学校2年生以上においても、学級編成の標準を35人に引き下げること」「教育の機会均等と水準の維持向上を図るため、義務教育国庫負担制度の負担割合を堅持すること」を求めていますが、今回の請願も同様の趣旨であるということです。
経済協力開発機構(OECD)は今年9月8日、2017年の加盟各国などの国内総生産(GDP)に占める小学校から大学に相当する教育の公的支出の割合などを公表しました。日本は2.9%でOECD平均の4.1%を大きく下回り、比較可能な38カ国のうち下から2番目でした。
また、公立の初等教育の1クラスあたりの平均児童数は、OECD平均の21人に対し、日本は27人。同じく前期中等教育の1クラスあたりの生徒数は、OECD平均の23人に対し、日本は32人といっそう差が開く結果となりました。初等・前期中等とも加盟国中で2番目に多い値となっています。
このような世界における日本の現状を踏まえて子どもたちに豊かな教育環境を整えるとともに、今後、新型コロナウイルス以外の感染症が発生しても、感染予防に対応しうる20人学級を展望した少人数学級の前進が今、求められています。もちろん本市だけでそれを実現していくには財政的にも教員の数にも限界があることから、国に責任を持って進めていただくことを本市議会からも要請すべきと考えます。
以上3つの賛成の理由を申し上げ、同僚議員の皆様のご賛同を心からお願い申し上げまして、日本共産党市議団を代表しての討論を終わります。