◆(大園たつや議員) 日本共産党市議団を代表して、請願第1号 加齢性難聴者の補聴器購入に対する助成制度の創設等について及び請願第2号 国の責任による「20人学級」を展望した少人数学級の前進を求める意見書提出についての2件の請願について、賛成の立場から討論を行います。
 まず、請願第1号 加齢性難聴者の補聴器購入に対する助成制度の創設等について申し上げます。
 同請願は、国に対する加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的補助及び医療保険適用を求める意見書の採択と本市独自の加齢性難聴者の補聴器購入に対する助成制度の創設を求めるものです。
 第1の理由として、委員会審査における不採択の理由として、国立長寿医療研究センターにおける補聴器による認知機能低下予防の効果を検証するための研究については2024年までかかるとのことであり、明確な科学的根拠、いわゆるエビデンスが確認されていない現状では、公的助成、医療保険の適用を求める意見書提出については時期尚早と言わざるを得ないとの意見が表明されましたが、私どもの独自の調査では、必ずしも研究が2024年までかかるのではなく、2022年度までに研究が終了し、2023年度に研究結果がまとまるとの情報を確認しています。
 一方、国際的には、難聴と認知症との関係性について、2017年7月、国際アルツハイマー病会議において、認知症の症例の約35%は潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因すると発表し、その際、予防できる要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子であると指摘されています。つまり、国際的には難聴と認知症との関係性についてエビデンスは確立されており、この事実は難聴に対処することで認知症が積極的に予防できることを意味しています。今、国に対して、加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的補助等を要請することが決して時期尚早ではなく、国際的な科学的根拠を踏まえた時宜にかなった要請であると考えます。
 第2の理由として、委員会審査では、全国市長会が加齢性難聴者の補聴器購入に対する補助制度の創設を提言したことを踏まえ、今後、国等の動向を注視したいとの不採択の意見が表明されました。九州市長会を含む4支部から議案が提出された結果、国への提言が行われたと伺っておりますが、このような提言が行われたということは、地方自治体としても難聴と認知症の関係性について理解を深め、先ほどのエビデンスの有無にかかわらず、補聴器購入に対する国の補助制度の創設の必要性について市長会として認識が一致したことになります。市長会にこのような積極的な動きがあるならば、私ども議会も全国市長会と歩調を合わせ、同請願の趣旨に即して国に意見書を上げるべきと考えます。
 第3の理由として、同請願に対して、健康福祉局当局は、難聴者数の傾向について把握していない、加齢による身体的機能の低下と補聴器購入助成制度創設のための財源の確保について両面から研究したい、他都市の調査を継続しながら今後、検討を進めていきたいと見解を表明しています。
 本会議での私どもの会派の個人質疑でも明らかになりましたが、本市の要支援・要介護認定者数3万3,390人は、既に認定調査の中で、聴力、具体的には、「普通」、「普通の声でやっと聞き取れる」、「かなり大きな声なら何とか聞き取れる」、「ほとんど聞こえない」、「聞こえているのか判断不能」の5段階に分けて調査員が判定しています。また、同時に認知症の程度についても、家庭外で日常生活に支障を来すような症状や意思疎通の困難さが見られるⅡa以上の場合、認知症の判定が行われており、これらの判定結果は本市は既にデータとして保有しています。にもかかわらず、聴力と認知症との関係性について調査を求めたところ、国の動向を注視するとの答弁が示され、本市自らが研究するという立場を表明されませんでした。
 したがって、同請願を採択していただくことによって、市当局が前向きに調査研究に取り組むことを推進し、市独自の加齢性難聴者の補聴器購入に対する助成制度の創設に向けた検討を加速させることになると考えます。
 以上、3つの賛成の理由を申し上げ、同僚議員の皆様の御賛同をお願いいたします。
 次に、請願第2号 国の責任による「20人学級」を展望した少人数学級の前進を求める意見書提出について申し上げます。
 本件は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言後に取りまとめられた学校の新しい生活様式に基づいて、身体的距離を保つために40人学級を20人学級に編制した緊急的な取組を経て、改めて少人数学級が子供たちの豊かな学びを支えるとともに、感染症対策としても効果があることが全国的に認識されたことから、国の責任で前進を求める意見書を鹿児島市議会から提出することを要請するものです。
 第1の理由としては、請願では、「子どもたちのいのちと健康を守り、成長と発達を保障するため、緊急に20人程度で授業ができるようにすること。そのために教職員の増員と教室の確保を国の責任で行うこと」となっていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が本市でも予断を許さない状況の中、今後は文科省の学校の新しい生活様式の行動基準を踏まえた対応が必要です。行動基準にある身体的距離をできるだけ2メートル、最低1メートルとした場合、現在の教室面積の平均64平方メートルの40人学級では最大20人編制でなければ距離を保つことはできませんが、請願者の意見陳述でも触れられましたように、過大規模校ともなれば40人を超える学級編制もあり、余裕教室もない状況の中で、行動基準を担保する教職員の増員と教室の確保は本市にとっても喫緊の課題であると考えます。
 第2の理由として、第1の理由で述べた小学校の現状は全国的なものであり、地方からの要請で国も大きく動いているからです。今年7月3日に全国知事会、全国市長会、全国町村会が連名で、現在の40人学級では新型コロナウイルスの感染予防ができないとして、少人数学級の実現を求める緊急提言を萩生田光一文部科学相に手渡しました。その後、中央教育審議会特別部会の中間まとめ(骨子案)でも、「身体的距離の確保に向けて教室等の実態に応じて少人数編制を可能とするなど、新時代の教室環境に応じた指導体制や必要な施設・設備の整備を図る」と明記され、さらに、政府の教育再生実行会議でも来年度の予算編成において、関係省庁に対して少人数学級の検討を促すことで合意、安倍内閣の退陣後も議論を続け、早ければ年内に具体的な制度設計をまとめる方向で一致しました。
 先日の報道では、文部科学省が1学級当たりの児童生徒数の上限を今後10年かけて30人に引き下げた場合、追加的な財政負担がほとんど必要ないとする試算を明らかにした一方で、どういった内容や規模で実現できるのか政府内での折衝が続いているとのことです。
 まさに、コロナ禍を経た地方の切実な声が国を動かしているときだからこそ、地方自治の車の両輪である本市議会が国に意見書を提出し、この動きを後押しする必要があると考えます。
 第3の理由として、本市議会では、さきの第2回定例会においても、教育予算の拡充を求める国への意見書を全会一致で可決し、「子どもたちの教育環境改善のために、計画的な教職員定数の改善を推進すること。とりわけ、小学校2年生以上においても、学級編制の標準を35人に引き下げること」、「教育の機会均等と水準の維持向上を図るため、義務教育費国庫負担制度の負担割合を堅持すること」を求めていますが、今回の請願も同様の趣旨であるということです。
 経済協力開発機構(OECD)は、今年9月8日、2017年の加盟各国などの国内総生産(GDP)に占める小学校から大学に相当する教育の公的支出の割合などを公表しました。日本は2.9%で、OECD平均の4.1%を大きく下回り、比較可能な38か国のうち下から2番目でした。また、公立の初等教育の1クラス当たりの平均児童数は、OECD平均の21人に対し、日本は27人、同じく前期中等教育の1クラス当たりの生徒数は、OECD平均の23人に対し、日本は32人と一層差が開く結果となりました。初等、前期中等とも加盟国中では2番目に多い値となっています。
 このような世界における日本の現状を踏まえて、子供たちに豊かな教育環境を整えるとともに、今後、新型コロナウイルス以外の感染症が発生しても感染予防に対応し得る20人学級を展望した少人数学級の前進が今求められています。もちろん、本市だけでそれを実現していくには財政的にも教員の数にも限界があることから、国に責任を持って進めていただくことを本市議会からも要請すべきと考えます。
 以上、3つの賛成の理由を申し上げ、同僚議員の皆様の御賛同を心からお願いを申し上げまして、日本共産党市議団を代表しての討論を終わります。(拍手)