◆(園山えり議員) 日本共産党市議団を代表しまして、今回の議会に提案されました決算議案を除く14件の議案のうち、2件に反対する立場から討論を行います。
 まず、第30号議案 鹿児島市手数料条例一部改正の件については、コンビニエンスストア等における住民票の写しの交付等に係る手数料を減額する特例を設けるとともに長期優良住宅の普及の促進に関する法律の一部改正に伴い、建築行為を伴わない既存住宅に係る長期優良住宅の計画認定申請手数料を定めるものですが、マイナンバーカードの普及についての内容が含まれることから、以下反対の理由を申し上げます。
 1点目、条例改正の内容としましては、コンビニエンスストアでの交付手数料を100円減額することで利便性を高め普及を促進する内容ですが、マイナンバーカードの普及状況は令和4年7月現在で26万6,706枚、交付率44.4%、コンビニ交付の件数については、令和4年4月から7月までで3万2,159件、交付全体の20万84件の16%にとどまっており、マイナンバーカードの普及が進まない中、カードを作成していない市民との負担の公平性の観点から問題であること。
 2点目、交付手数料を減額することで本市の収入への影響が約460万円見込まれており、一般会計補正予算に計上されています。国からは減額分に新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用できるとの事務連絡が来ていましたが、本市としてはそのまま減額を受け入れる対応としたようです。これまでマイナンバーの普及については国が財源を確保してきたにもかかわらず、貴重な新型コロナウイルス対策の交付金で補填するのか、市がそのまま減額分を負うのかという選択肢ではなく、国が責任を持つべきであると考えます。
 3点目、マイナンバーカードの普及促進については閣議決定されたデジタル田園都市国家構想における総務省の方針によって強化されている流れにあります。その内容は、交付率が低い自治体をフォローアップ対象団体に指定し、交付率を地方交付税に反映して減額する上、積算根拠は明らかにしないとなっています。報道では交付率が平均以下の自治体にはデジタル関連の交付金の一部をゼロにするなどと報じられており、このような憲法下における地方自治を侵害するやり方は問題であり、地方自治体として国に撤回を求めるべきであること。
 以上の理由から、第30号議案とその影響が含まれている第39号議案についても反対です。
 次に、第39号議案 令和4年度鹿児島市一般会計補正予算(第6号)について、反対する理由を以下申し上げます。
 款総務費、項総務管理費、目一般管理費、個人番号カード利活用検証事業629万8千円については、個人番号カードを軸とした本市独自のIDによる施設利用者証のひもづけやポイント流通などの実証実験を行い、新たなサービスによる市民の利便性の向上やデータ活用に向けた効果検証を行う内容となっていますが、反対する理由を申し上げます。
 1点目、本市独自のIDによる施設利用者証のひもづけやポイント流通などは、マイナンバーの基本情報に加え、施設や店舗の利用など民間を含む様々な分野の情報を連結する仕組みであり、実証実験として利用登録に同意するとはいえ、個人情報が漏えいした場合の被害が大きくなる懸念があること。
 2点目、登録した市民の情報は実証実験後完全に消去されるとの答弁でしたが、一度データ化されたものが完全に削除できるものか懸念が残ります。国の個人情報保護委員会における特定個人情報の漏えい等事案については令和3年度も170件に上っており、立入調査も増えるなど、市民のカード取得が進まない一因であることを指摘するとともに、これまで申し上げてきましたとおり人為的な要因による情報漏えいは防ぐことができず、その懸念が払拭できないこと。
 3点目、第30号議案の理由で申し上げましたとおり、これまでマイナンバーカード関連の事業は国が大部分の財源を支出してきていますが、この事業の財源は新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金になっています。今回の事業が新型コロナの感染予防に十分につながるとは考えにくいことから、コロナ禍に苦しむ市民への負担軽減のために活用するべきであること。
 4点目、私ども日本共産党は行政手続のデジタル化を全て否定しているわけではありませんが、国のデジタル改革の狙いは、国や自治体が持つ個人情報を企業に解放し、その利益につなげるための改革であり、この事業は国が勧める企業、自治体、政府から大量の個人情報を集めて民間企業に委ねるデータ連携基盤の本市の第一歩であること。
 次に、款商工費、項商工費、目観光費、“まってるし鹿児島市“宿泊キャンペーン事業7,400万円について申し上げます。
 今回、補正予算に計上されましたこの事業と内容は令和4年度当初予算で議決されたものと同じ内容となっていますが、その理由は、7月24日、桜島の噴火警戒レベルが初めてレベル5に引き上げられ、島内では宿泊キャンセルが相次ぎ、その後も風評被害が続いたことから、その対策として当初予算の財源で9月1日から11月まで桜島の宿泊にプレミアムを付加した宿泊キャンペーン事業を開始したことから財源が不足したためです。
 しかし、この予算執行上の対応には問題があると考えます。
 理由の1点目に、9月1日から実施されている事業については、桜島の風評被害対策の一環としては理解できるものの、10万人当たりの感染者数が全国で最も多くなり、BA.5対策強化宣言が延長される中、類似の事業で国や県がワクチン接種や陰性証明を条件にしているにもかかわらず、無条件に県外からの宿泊客を呼び込む内容となっており、感染拡大防止と経済活動の両立という観点からも問題であること。
 2点目、当局は当初予算でクーポン額面等の詳細は新型コロナや国、県の宿泊キャンペーンの状況等を踏まえ柔軟に対応すると説明したことを根拠に予算執行しておられますが、風評被害対策として実施するには拡大解釈だったことを厳しく指摘するとともに本来なら感染拡大状況等を踏まえて事業実施を見合わせるべきだったこと。
 3点目、議決された当初予算の内容と違う事業にその財源を利用する行為については、当局は補正予算でも流用でもないと答弁しておられますが、予算執行上の根拠がない行為によって不足した財源を穴埋めする今回の補正予算は問題であること。
 4点目、9月1日から実施されている宿泊キャンペーン事業については、当局の補正予算でも流用でもない裁量によって執行されており、その結果、補正予算でないため賛否を問えず、専決処分でもないため、承認、不承認も問えず、本会議質疑や委員会審査等で議会の意見を踏まえることもない議会軽視の対応であること。
 第39号議案の一般会計補正予算については、これまで述べてきました事業を含むことから反対です。
 以上、2件の議案に反対する理由を申し上げ、日本共産党を代表しての討論を終わります。(拍手)