◆(園山えり議員) 日本共産党市議団を代表して、ただいま上程されました二十議案のうち、第五五号議案 工事請負契約締結の件、第六一号議案 鹿児島市個人情報保護条例一部改正の件、第六三号議案 平成二十九年度鹿児島市一般会計補正予算(第四号)中、款民生費、項生活保護費、目生活保護総務費、福祉総合情報システム改修経費六百九十万円、以上、三議案について反対の討論を行います。
初めに、第五五号議案 工事請負契約締結の件は、本市と川崎重工業グループとの間で締結された二百十億六千万円の新南部清掃工場建設工事請負契約について議会の議決を求めるものですが、次のような理由から反対いたします。
第一に、今回の新南部清掃工場建設の請負契約の議決によって基本契約及び運営委託契約が成立し、設計、建設、維持管理、運営までを一括して契約する公設民営方式、いわゆるDBO方式による事業が始まることになります。しかし、DBO方式がこれまでの公設公営方式と比較し市民にとってどのようなメリットがあるのか、その検証結果は運営期間が終了する二十年三カ月後でなければ検証されないことは問題です。
第二に、DBO方式の事業終了後に公設公営方式と比較して一三・一%のバリュー・フォー・マネーと約十九億円のコスト削減効果があるとの試算が示されましたが、公設公営方式による価格が不明であると同時に、全国にDBO方式による事業が終了した事例がないことから、事業終了後の検証方法について明らかにできないことは問題です。
第三に、設計、建設、維持管理、運営に至る業務が適正に行われているかをチェックするためのモニタリング体制の強化と本市と事業者間のトラブルを回避するためのリスク分担の明確化は不可欠ですが、搬入されるごみ等に処理不適物が混入していた場合のコスト増は本市が責任を負うなど、新たな負担増が見込まれる懸念があること。
第四に、今回の新南部清掃工場とバイオガス施設との一体整備による売電収入、売ガス収入の見込みは、事業者にとっては達成目標ではなく努力目標であり、CO2削減のコストも示されませんでしたが、低炭素社会、循環型社会を実現していくためには、できるだけ低コストの技術を活用して、再生可能・自然エネルギーの普及を図っていくことが望ましいと考えることから、バイオガス施設の費用対効果についての懸念が払拭されないこと。
以上の理由から、今回の議決が建設期間の約四年間、運営期間の二十年三カ月にわたる長期の契約を承認し、民間事業者に委ねることになり、その間の予期せぬトラブル発生への懸念やDBO事業の検証が行われないことから、第五五号議案に反対いたします。
次に、第六一号議案 鹿児島市個人情報保護条例一部改正の件については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の一部改正、いわゆる行政機関個人情報保護法の一部改正に伴い、本市の個人情報の定義等を改めるために提案されたものですが、次のような理由から本条例改正に反対いたします。
第一に、今回の条例改正では、個人識別符号が明記され、個人情報の定義がより明確化されましたが、携帯電話番号等の情報は除外されています。これは今回の条例改正の背景となった個人情報保護法の改正において、産業界の意向を受けて個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会の実現に資するという目的が追加され、個人情報保護の理念と相入れない個人情報の利活用という理念が持ち込まれたことにより、携帯電話番号等の情報が個人識別符号から除外されたと考えることから問題です。
第二に、今回の条例改正では、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴等その他取り扱いに特に配慮を要する個人情報である要配慮個人情報が初めて明記されます。しかし、条例改正案第三条の二で、実施機関は要配慮個人情報を収集してはならないとしながらも、法令または条例に定めがあるときや実施機関が認めるときは、要配慮個人情報を収集することができるとしていることは問題です。これは各課が現在所有する二千八百六十一件の個人情報取扱事務登録簿の中で既に要配慮個人情報は収集されており、今回の条例改正は現状を追認することにほかなりません。また、信条については、収集の事例がないとしながらも、今後、法令または条例に定めがある場合は収集できるという余地が残されている以上、市民が知らないところで要配慮個人情報が収集されるなど、市民の内心の自由が侵害される懸念があることから問題です。
第三に、今回の条例改正の根拠となった行政機関個人情報保護法の改正では、国の行政機関が保有する個人情報を特定の個人を識別することができないようにした非識別加工情報を民間事業者に提供し、利用契約を締結する事業の導入がうたわれています。改正行政機関個人情報保護法附則第四条では、これらの事業を国と地方公共団体が一体となって利用促進することが明記されたことにより、個人情報の匿名化の加工の体制整備や漏えい防止のための安全確保等の課題をクリアした上で国の検討状況などを踏まえて対応していくとの見解が市当局から示されたことは、今回の条例改正が個人情報保護の理念とは相入れない個人情報の利活用への道を切り開くための下準備という側面があり、問題です。
以上の理由から、今回の条例改正が個人情報の定義の明確化にとどまらず、個人情報保護の後退につながる懸念があると考えることから反対いたします。
次に、第六三号議案 平成二十九年度鹿児島市一般会計補正予算(第四号)中、款民生費、項生活保護費、目生活保護総務費、福祉総合情報システム改修経費六百九十万円については、社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度に基づいて既存の福祉総合情報システムに障害福祉課の情報を追加し、情報提供ネットワークを通じて国や他自治体との情報連携を行うためのシステムを改修する費用です。しかし、国の個人情報保護委員会の平成二十九年度上半期の報告によると、二百七十三件のマイナンバー情報の漏えい事案が報告されるなど、個人情報の漏えいとプライバシー侵害のリスクの拡大につながるシステム改修であることから、反対いたします。
以上の三つの議案について反対の理由を申し上げ、討論を終わります。(拍手)