◆(たてやま清隆議員) 日本共産党市議団を代表して、請願第5号 日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書提出について、賛成の立場から討論を行います。
同請願は、ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、核兵器をなくせと訴え続けてきた被爆者と市民の声が国際政治を動かし、2021年1月22日、国際条約として発効した核兵器禁止条約に唯一の戦争被爆国である日本政府が同条約に署名・批准し、参加することによって、核兵器のない世界を実現する推進力になることを求めて提出されたものであり、賛成の理由を4点申し上げます。
賛成する第1の理由は、国際条約として発効した核兵器禁止条約(TPNW)は、その前文で核兵器が非人道的な兵器であると厳しく告発し、その開発、実験、生産、製造、取得、保有、貯蔵、移転、受領、使用の威嚇、禁止事項の援助、奨励、勧誘、援助の要請、配置、設置、展開など、核兵器に関わる活動を全面的に禁止する抜け穴のない条約であり、この条約を核保有国も含めて批准していくことこそが人類共通の課題である核兵器の全面廃絶につながる道であると確信するからであります。
しかし、これまでの条約でさえ守られていないのに、さらに一歩進んだ核兵器禁止条約を守ることができるのかという意見があります。確かにこれまでの核不拡散条約(NPT)は、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5か国のみを核保有国として認める代わりに、同条約第6条に誠実に核軍縮交渉を行う約束を規定したにもかかわらず、核軍縮は進んでいません。また、核実験を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)も26年が経過していますが、アメリカや中国は条約に署名はしているものの批准していないため、いまだ条約として発効されていません。これらの条約が守られなかったのは、法的拘束力が不十分であったため核保有国の核軍縮が進まず、核兵器を持たない国の中から自衛の名の下に北朝鮮など核兵器を持つ国々をつくり出す結果となりました。しかし、人類は核兵器の全面禁止を掲げる新たな国際法を手にすることができました。現在、署名国は91か国、批准国は68か国ですが、この条約に我が国も含め多くの国々が参加していくことが核兵器の全面廃絶に向けた法秩序を取り戻す唯一の道ではないでしょうか。
次に、賛成する第2の理由は、日本政府は核兵器を直ちに違法化する同条約に参加すれば、米国による核抑止力が維持できなくなることにより日本の安全保障が危険にさらされ、また、核保有国と非核保有国の分断を深めることになるため、国際社会の中で橋渡し役として核軍縮に取り組む立場を表明しています。しかし、核兵器禁止条約は国際社会に分断を持ち込むものではなく、NPT条約の核軍縮、核不拡散の目的を達成するために相互に補完及び支援する関係にあり、同条約第4条では核保有国に対しても条約に参加した上で核兵器を廃絶するプロセスを示すなど参加への扉を開いている条約です。したがって、核兵器の非人道性を唯一体験した戦争被爆国だからこそ、同条約に参加することによって初めて日本政府は国際社会の中で真の橋渡し役を発揮できると考えるからであります。
しかし、核兵器を持つ北朝鮮、中国、ロシアのミサイルは日本に向いているから日本政府の立場を支持したいという意見があります。ロシアが核兵器で威嚇しながらウクライナへの侵略戦争を続けていることは断固糾弾されなければなりません。そして同時に、核保有国が他国を核兵器で威嚇しながら戦争を推進している事実は核兵器の存在が戦争を抑止する力となるとするこれまでの核抑止力の考えが破綻していることを意味します。
したがって、アメリカの核の傘、つまり、核抑止力で自国を防衛する立場を貫いてきた日本政府は、核抑止力とはいざとなれば核兵器の使用を前提にした考えであり、広島、長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわない議論であることを認識し、核戦争につながる核抑止力の考えから脱却すべきときではないでしょうか。
なお、日本と同様にアメリカの核の傘の下にあるドイツやノルウェーは同条約の締約国会議にオブザーバー参加しましたが、欠席した日本に対し、向こう側に渡ろうとしない日本に橋を架けることはできないとの批判が寄せられました。せめてオブザーバー参加し、戦争被爆国としての責務を果たすべきではないでしょうか。
次に、賛成する第3の理由は、都市相互の緊密な連帯を通じて核兵器廃絶の市民意識を国際的な規模で喚起するために結成された平和首長会議は、現在、166か国、8,213都市が加盟し、県内では本市をはじめ、43市町村全てが加盟しています。そして、現在、平和首長会議の重点課題は核兵器禁止条約の批准国拡大の促進であり、日本政府に同条約の批准を求めています。したがって、今回の請願は平和首長会議に加盟する本市の方針とも合致するため、本市議会においても同請願を採択していただき、市と議会が一体となって日本政府に求めることが重要であると考えるからです。
次に、賛成する第4の理由は、核兵器禁止条約は長年にわたる草の根の市民の運動と被爆者が力を合わせて実現してきた条約であり、日本政府こそ被爆者の願いに応えていただきたいと考えるからです。
私は今回の討論を考える上で被爆者の方の思いをお聞きしたいと考え、被爆二世の会の御紹介で95歳の被爆者の方とお会いすることができました。女学校を卒業した後、挺身隊として長崎市の爆心地から1.5キロ内の工場で働いていたその方は、原爆投下当日は弁当係であったため、工場から離れた場所へ学友と一緒に弁当を取りに行き、工場に戻ろうとしたとき、ぴかっという光を感じた瞬間、家の下敷きになったものの、傷もなく助かりました。しかし、工場の仲間たちは亡くなったそうです。その被爆者の方は、「駅に向かう途中、黒焦げになった遺体があちこちにありました。友達を失い、野宿をしながら鹿児島にようやくたどり着いたあの惨めな体験を思い出します。原爆を二度と起こしてもらいたくはない、核兵器で平和を守ることはできません。核兵器をなくしてこそ、平和を守ることができると思います」と話してくださいました。
私は、このような被爆者の方々の思いに応えるためにも今回の請願への御賛同をお願いいたしまして、日本共産党市議団を代表しての討論を終わります。(拍手)
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